店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 犯罪計画や密室、誘拐など、趣向の違うミステリーを一冊で楽しみたい時
- 刺さるポイント
- 表題作を含む中編それぞれが、人の欲望や秘密を別の角度から照らしていく
- 向いている人
- 短編集でもしっかりした読み応えと反転の手触りを求める人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、貫井徳郎さんのミステリー中編集『光と影の誘惑』をご紹介します。
表題作では、銀行の現金輸送を襲う計画が描かれます。目標は一億円。周到に準備された強奪は、いったん成功したかのように見えますが、そこから男たちの思惑や裏切りが少しずつほころび始めます。犯罪計画の緊張感と、人間の欲が計画を狂わせていく怖さが重なった一編です。
収録作には、誘拐、密室、家族の秘密など、ミステリーらしい題材が並びます。ただし、トリックや謎だけを見せる作品集ではありません。事件の背後には、孤独、嫉妬、執着、親子や夫婦の間に沈んだ感情があります。光が当たっている場所のすぐ隣に、見たくなかった影がある。そんな感触が、タイトルにもよく表れています。
この作品集の魅力は、一編ごとに趣向が変わりながらも、どこかで人間の弱さに帰ってくるところです。計画は合理的に見えても、そこに関わる人間は合理的ではいられません。秘密を守りたい気持ち、誰かに認められたい思い、過去から逃げたい願いが、事件を別の方向へ動かしていきます。
『光と影の誘惑』は、長編に入る前に貫井徳郎さんのミステリーの切れ味を試したい人にも向いた一冊です。短めの物語の中に、犯罪の緊張感と、人の心の暗がりを見つめる視線がしっかり詰まっています。
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