店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 短い物語で次々と足元を外されるブラックなミステリーを読みたい時
- 刺さるポイント
- 一見ささやかな日常や願望が、最後には望まない結末へ反転していく
- 向いている人
- 後味の悪さや皮肉を、物語の切れ味として楽しめる人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、歌野晶午さんの『ハッピーエンドにさよならを』をご紹介します。
本作は、題名の通り、気持ちよく丸く収まる結末から距離を置いた短編集です。収録作の長さや雰囲気はさまざまですが、どの物語にも共通しているのは、読者が期待する着地点を少しずらし、最後に皮肉な余韻を残すところです。明るい救いを差し出すのではなく、人間の欲望や思い込みが招く苦い結末を、淡々と、時にブラックユーモアを交えて描いていきます。
短編ごとに扱われる題材は、日常の不満、身勝手な願望、家族や社会の中にある小さな歪みなど、身近なものが中心です。だからこそ、奇妙な設定であってもどこか現実と地続きに感じられます。最初は軽い読み口に見えても、終盤で意味が反転し、登場人物の見えていなかった一面が浮かび上がる。その切り返しの鋭さが、この本の大きな魅力です。
収録作は、短いものほど寓話のように効き、長めのものほどミステリーとしての仕掛けがじわじわ立ち上がります。笑って済ませられそうな出来事が、最後には笑えない場所へ着地するため、読む側も油断できません。人間の都合のよい願いを、物語が容赦なく裏切っていきます。
歌野晶午さんの長編にある大掛かりな仕掛けとは違い、本作では短い枚数の中で読者の油断を誘い、最後の数行で印象を変える技巧が目立ちます。後味の悪さも含めて楽しむタイプの作品なので、温かい読後感を求める時よりも、少し意地の悪い物語を続けて味わいたい時に向いています。
『ハッピーエンドにさよならを』は、結末の苦味をエンターテインメントとして楽しめる短編集です。救いのある話ばかりでは物足りない人、物語に潜む皮肉や反転の快感を味わいたい人におすすめです。
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