店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 軽妙な語り口で、欲望と駆け引きが転がるコンゲームを楽しみたい時
- 刺さるポイント
- 銀座の夜、金銭感覚、見栄と虚実が絡み合い、笑いと緊張感の間で物語が進む
- 向いている人
- 重すぎない犯罪サスペンスや、だまし合いのテンポを味わいたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、楡周平さんのコンゲーム小説 『フェイク』をご紹介します。
物語の中心にいるのは、就職がうまくいかず、銀座の高級クラブでボーイとして働き始めた若者、岩崎陽一です。華やかな店の裏側に身を置きながら、彼の暮らしは余裕とはほど遠く、夜の世界のきらびやかさと自分の現実との落差に揺さぶられていきます。そんな陽一は、店に移ってきた摩耶ママの運転手を任されることで、思いがけない金と欲の駆け引きに巻き込まれていきます。
本作の面白さは、銀座という舞台の派手さだけではなく、人が何を本物だと信じ、何にだまされ、何を演じてしまうのかを、軽い足取りで見せていくところにあります。高級ワイン、夜の店、人間関係、借金、見栄。どれも現実味のある欲望なのに、物語はどこか滑稽で、主人公の情けなさも含めて読み味を重くしすぎません。
読んでいくと、金を手に入れたいという単純な願いが、いつの間にか自分の価値を取り戻したいという切実さにも見えてきます。誰かを欺こうとする人物たちも、別の角度から見れば、世間に値踏みされ続けてきた人たちです。だからこそ、笑える場面の奥に、社会の階段を上がれなかった者の焦りや反発がにじみます。
派手な犯罪小説というより、虚勢と本音が交差する人間喜劇として楽しめる一冊です。重厚な社会派作品の前に、楡周平さんの軽妙な一面に触れてみたい人にも向いています。
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