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嘘と正典 表紙

嘘と正典

2026年5月27日 更新

今日は、小川哲さんの『嘘と正典』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
短編ごとに違うジャンルの知的な仕掛けを楽しみたい時
刺さるポイント
時間、歴史、音楽、政治、血統といった題材を、奇想と感情の両面から物語に変えていく
向いている人
SF短編や歴史改変、余韻の残る寓話的な小説が好きな人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、小川哲さんの『嘘と正典』をご紹介します。

本作は、奇想、歴史、SF、寓話の手触りが一冊の中で響き合う短編集です。タイムトラベルに挑むマジシャン、名馬の血統に自分の人生を重ねる人物、永遠の勝利を望む王、音楽を通貨のように扱う島、未来に残された不良文化、そして政治と思想をめぐる表題作。扱う題材はばらばらに見えますが、どの作品にも、世界の見方を一段ずらすような仕掛けがあります。

小川哲さんの短編の魅力は、発想の大きさだけでなく、その発想が人間の感情に戻ってくるところです。時間を越える話であっても、歴史を組み替える話であっても、中心にあるのは、失ったものを取り戻したい、勝利を永遠にしたい、自分の存在に意味を与えたいという願いです。壮大なアイデアが、個人の執着や寂しさと結びつくことで、物語に独特の余韻が生まれます。

表題作では、事実とは何か、正しい歴史とは何かという問いが、スパイ小説のような緊張感とともに立ち上がります。タイトルの「正典」は、誰かが選び、残し、信じることにした物語とも読めます。そこに「嘘」が重なることで、私たちが真実だと思っているものの不安定さが浮かび上がります。

一編ごとの世界観が濃いため、少しずつ読んでも満足感があります。派手な結末だけを求めるより、読み終えたあとに設定の意味や人物の選択を考えたくなるタイプの作品です。SF短編の知的な刺激と、文学的な苦味の両方を味わいたい人に向いています。

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