店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- ひと夏の記憶や、忘れがたい友人との時間に浸りたい時
- 刺さるポイント
- 海辺の町で過ごす最後の夏を通して、少女たちのまぶしさと別れの予感が立ち上がる
- 向いている人
- 青春小説、夏の物語、少し痛みを含んだ友情と恋愛を読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、吉本ばななさんの『TUGUMI』をご紹介します。
物語の語り手は、海辺の小さな町で従姉妹のつぐみと姉妹のように育ったまりあです。病弱で、わがままで、口も悪い。けれど、誰よりも鮮やかな生命力を放っているつぐみは、周囲を振り回しながらも強く惹きつけます。まりあは東京へ移り住んだあと、旅館を営む親戚の家に戻り、つぐみたちと最後の夏を過ごすことになります。
この作品の魅力は、海辺の町の光や匂いと、二度とは戻らない時間の切なさが重なっているところにあります。夏の空気、夜の海、閉じていく旅館、淡い恋の気配。そのすべてが、終わりを知っているからこそまぶしく見えます。つぐみの乱暴な言葉や身勝手な振る舞いも、ただの困った性格としてではなく、限られた体で世界に噛みつくように生きる姿として響いてきます。
まりあにとってつぐみは、親しいだけでは説明できない存在です。憧れでもあり、苛立ちでもあり、子どもの頃の自分をつなぎとめる記憶そのものでもあります。だからこそ、つぐみとの時間は楽しいだけではありません。傷つけられたり、振り回されたりしながら、それでも離れがたい関係が描かれます。読者の多くが強く反応するのも、この人物の危うさと魅力が同時に立ち上がるからでしょう。
『TUGUMI』は、青春をきれいな思い出だけにしない小説です。大人になる前の季節には、理不尽さも、残酷さも、誰かを好きになるまぶしさも混ざっています。読み終えたあと、昔過ごした夏や、もう会えない誰かの声がふっとよみがえるような一冊です。
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