店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 失恋と自意識の痛さを、笑いながら読み切りたい時
- 刺さるポイント
- 京都の学生生活を舞台に、妄想力だけは豊かな語り手が恋と屈折を暴走させる
- 向いている人
- 青春小説の甘さよりも、こじらせた可笑しさと勢いを味わいたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、森見登美彦さんの『太陽の塔』をご紹介します。
物語の語り手は、京都で学生生活を送る青年です。彼はかつて恋人だった水尾さんに振られたあとも、その事実をまっすぐ受け止めることができません。自分の恋はなぜ破れたのか。水尾さんとはいったい何者だったのか。そんな問いを、彼は反省ではなく研究という形にすり替え、ひたすら妄想と屁理屈を積み上げていきます。
この作品の魅力は、失恋の痛みを湿っぽく描くのではなく、徹底して滑稽なエネルギーへ変えてしまうところにあります。主人公は自分を客観視できているようで、肝心なところではまるで見えていません。けれど、その見苦しさや未熟さが、妙に人間らしく、笑っているうちに少し身につまされます。
舞台となる京都の街も、ただの背景ではありません。大学、下宿、街角、クリスマスの気配が、主人公の過剰な自意識と結びつき、現実なのにどこか奇妙な空間として立ち上がります。仲間たちとのくだらないやり取りも含めて、若さの勢いと空回りが濃く詰まっています。
『太陽の塔』は、きれいな成長物語ではありません。むしろ、成長する前の情けなさや、恋に破れた人間のしつこさを、森見登美彦さんらしい文体で笑い飛ばす作品です。失恋、妄想、京都、そしてどうにもならない青春の熱を、少し離れたところから楽しみたい人におすすめの一冊です。
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