店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- バブルの熱狂と転落を、一人の女性の半生からたどりたい時
- 刺さるポイント
- 巨額の負債を抱えた女の生涯を聞き取るほど、時代の欲望と信仰の形が見えてくる
- 向いている人
- 実在事件を思わせる社会派ミステリーや、昭和から平成の空気を味わいたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、葉真中顕さんの社会派ミステリー『そして、海の泡になる』をご紹介します。
物語の中心にいるのは、朝比奈ハルという女性です。バブル絶頂期に巨額の負債を抱え、世間から強烈な注目を浴びた彼女は、平成が終わる頃、ひっそりと獄中で亡くなります。その生涯を小説に書こうと決めた語り手は、彼女を知る人々を訪ね、聞き取りを重ねていきます。
ハルは、ただの悪女として描かれるわけではありません。和歌山の村で生まれ、戦後の混乱、貧しさ、家族の痛みを背負いながら、やがて金と信仰と欲望が渦巻く世界へ入っていきます。彼女がなぜ人を惹きつけ、なぜ巨大な金を動かす存在になったのか。証言が積み重なるほど、一人の人物像は単純な善悪から遠ざかっていきます。
本作で描かれるのは、ハル個人の転落だけではありません。敗戦後の社会、バブル経済の熱狂、崩壊後の空気、そして人々が不安な時代に何を信じようとするのか。大きな時代の変化が、個人の欲望や孤独と結びついていきます。海の泡のように一瞬きらめいて消えるものの中に、人間の弱さと切実さが浮かび上がります。
ミステリーとしては、語り手が関係者の証言を集めながら、ハルという女性の輪郭を探っていく構成です。誰の話を信じるのか。事実と作り話の境目はどこにあるのか。証言の食い違いが、彼女の謎をさらに深くしていきます。
『そして、海の泡になる』は、派手な事件の裏側にある時代の空気を読む作品です。バブルという言葉に残る明るさだけでなく、その熱狂に飲み込まれた人々の孤独や痛みに触れたい人に向いています。
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