店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 遠い異国の日本人移民史を、重厚な物語として読みたい時
- 刺さるポイント
- ブラジルの勝ち負け抗争を背景に、親友同士の絆が情報と信念に引き裂かれていく
- 向いている人
- 歴史小説の厚みと、現代にも通じる分断の怖さを同時に味わいたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、葉真中顕さんの歴史長編『灼熱』をご紹介します。
舞台は、一九三〇年代から戦後にかけてのブラジルです。沖縄から海を渡った少年、比嘉勇は、日本から遠く離れた入植地で日系二世の南雲トキオと出会います。境遇の違う二人は、異国の地で友情を育み、かけがえのない存在になっていきます。けれどやがて、祖国日本の敗戦をめぐる認識が、移民社会を大きく分断していきます。
本作の背景にあるのは、戦後ブラジルの日系社会で起きた「勝ち負け抗争」です。日本は勝ったと信じる人々と、敗戦を受け入れる人々。その対立は、単なる意見の違いでは済まなくなり、暴力と疑心暗鬼を生んでいきます。遠い国で暮らす人々にとって、祖国とは何だったのか。信じたい情報だけを信じることは、どこまで人を変えてしまうのか。物語はその怖さを描き出します。
勇とトキオの関係は、この大きな歴史の流れに飲み込まれていきます。友として支え合った時間があるからこそ、二人が別々の側に立たされる展開は苦しいものになります。読者は、彼らの対立をただの思想の違いとしてではなく、移民として生きる誇りや不安、孤独の問題として受け止めることになります。
『灼熱』はページ数の多い大作ですが、扱っているテーマは現在にもつながっています。デマ、分断、集団心理、ナショナリズム。遠い過去の異国の物語でありながら、今の社会を映す鏡のようにも読めます。
歴史小説としてのスケール、友情の物語としての痛み、そして社会派小説としての問いが重なった一冊です。重厚な読書体験を求める人に、じっくり向き合ってほしい作品です。
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