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存在のすべてを 表紙

存在のすべてを

2026年5月27日 更新

今日は、塩田武士さんの『存在のすべてを』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
未解決事件の真相だけでなく、奪われた時間の重みまで味わいたい時
刺さるポイント
再取材で過去をほどくミステリーが、家族と表現をめぐる静かな人間ドラマへ広がる
向いている人
社会派ミステリーと長編ヒューマンドラマの両方をじっくり読みたい人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、塩田武士さんの『存在のすべてを』をご紹介します。

この作品は、平成三年に起きた誘拐事件を起点に、三十年という時間をかけて失われたものと、かろうじて残ったものを追いかける長編ミステリーです。物語の中心にいるのは、かつて警察担当だった新聞記者の門田。旧知の刑事の死をきっかけに、彼は過去の事件の関係者を改めて訪ね歩きます。その再取材の先で浮かび上がってくるのが、事件の被害者と、ある写実画家の存在です。

本作の読みどころは、事件の謎を解く面白さだけにありません。誘拐という大きな出来事が、被害者本人だけでなく、家族、捜査に関わった人、報道した人、見過ごした人の人生にまで長い影を落としていく。その広がりが、重層的に描かれます。真相を追う物語でありながら、読んでいるうちに、何が本当に救いになるのか、事実を知ることは誰を癒やし、誰を傷つけるのかという問いが迫ってきます。

塩田武士さんの筆致は、社会派ミステリーとしての緊張感と、人間ドラマとしての静かな厚みを両立させています。新聞記者の視点から過去を掘り起こす場面には、情報を集める怖さと、他人の人生に踏み込む責任が漂います。一方で、写実画家の描写には、失われた時間を取り戻そうとする切実さがあります。絵を描くこと、記録すること、誰かを見つめ続けることが、事件の解明とは別のかたちで人を支えていくのです。

二〇二四年本屋大賞で上位に選ばれたこともあり、読み応えのある社会派作品を探している人に手に取りやすい一冊です。派手などんでん返しだけを求めるより、過去と現在が少しずつつながっていく長編の呼吸を味わいたい人に向いています。読み終えるころには、存在をまるごと受け止めるとはどういうことか、その重みを静かに考えさせられます。

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