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人魚が逃げた 表紙

人魚が逃げた

2026年5月27日 更新

今日は、青山美智子さんの『人魚が逃げた』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
少し不思議な出来事を入口に、人の人生がやさしく交差する物語を読みたい時
刺さるポイント
銀座で起きた人魚騒動の裏側で、五人の節目が連作のようにつながっていく
向いている人
青山美智子作品の温かさや、日常に小さな魔法が差し込む群像劇が好きな人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、青山美智子さんの『人魚が逃げた』をご紹介します。

舞台は、週末の銀座です。ある日、SNSで「人魚が逃げた」という言葉が広まり、街には王子を名乗る謎めいた青年が現れます。彼は、自分の人魚がこの場所に逃げたのだと語ります。現実離れした騒ぎのようでいて、その出来事の周りでは、人生の曲がり角に立つ五人の物語が少しずつ動き始めていきます。

登場するのは、年の差のある恋愛に向き合う会社員、家族と過ごす時間の中で何かを見つめ直す人、絵にのめり込んできたコレクター、文学賞の結果を待つ作家、高級クラブで働く女性など、それぞれに事情を抱えた人たちです。人魚騒動は、彼らの悩みを直接解決する魔法ではありません。けれども、ふとした出会いや言葉が、止まっていた気持ちを少しだけ動かしていきます。

青山美智子作品らしい読み味は、やさしさを押しつけないところにあります。登場人物はみな、何かを失いそうだったり、選びきれない思いを抱えていたりします。それでも物語は、迷っている自分を責めるより、いま目の前にある縁にもう一度目を向けてみようと促します。おとぎ話のような題材を使いながら、描かれているのはとても現代的な孤独や再出発です。

また、銀座という場所もこの作品の大切な魅力です。多くの人がすれ違う街で、誰かの人生の一場面が、別の誰かの選択に静かに触れていく。人魚は本当にいるのか、王子は何を探しているのかという謎が、五つの人生を結びながら読者を先へ進ませます。

『人魚が逃げた』は、大きな事件よりも、人の心がほどける瞬間を味わいたい人に向いた一冊です。少し不思議で、でも読み終えると日常の景色がやわらかく見える。そんな温かな余韻を残してくれる物語です。

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