店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 不穏な短編を一話ずつ味わいながら、心の暗部に触れたい時
- 刺さるポイント
- 六つの物語に漂う共通の気配が、罪悪感や悪意の形を少しずつ浮かび上がらせる
- 向いている人
- ホラー、幻想、ミステリーの境目にある後味を楽しめる人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、道尾秀介さんの『鬼の跫音』をご紹介します。
『鬼の跫音』は、六つの短編からなる連作集です。どの物語にも、人の心の奥に潜む罪悪感、疑い、嫉妬、取り返しのつかない選択が影を落としています。怪異そのものが前に出るというより、日常の裂け目から不穏なものがにじみ出てくるような読み心地です。読み終えたあと、背後から足音が近づいてくるような余韻が残ります。
この本の魅力は、短編ごとに表情が変わるところにあります。幻想的な話もあれば、論理の積み重ねでぞっとさせる話もあります。けれど、どの作品にも共通しているのは、人が自分の中の暗さを見ないふりをしたとき、その暗さが別の形で戻ってくるという感覚です。恐怖は外から襲ってくるだけではなく、自分の過去や記憶の中から立ち上がってきます。
道尾秀介さんらしい技巧も随所にあります。読者は、語り手の言葉や場面の細部を頼りに物語を理解しようとしますが、最後まで読むと、見落としていた意味に気づかされます。短い作品だからこそ、ひとつの比喩や小道具が鋭く効き、結末で心の向きを反転させる力があります。鮮やかな解決というより、真相に触れた瞬間に空気が冷たくなるような短編集です。
『鬼の跫音』は、明るい気分転換として読む本ではありません。けれど、ホラーとミステリーの境目で、人間の哀しさや弱さをじっと見つめる力があります。長編ではなく短い作品で道尾作品の濃さを味わいたい人や、読み終えたあとにざわめきが残る小説を求めている人におすすめできます。
Nearby Shelves
近くの棚を見る
近くの棚: 似た読み味の本
Discover More