店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 家にまつわる怪異を、怖さだけでなく余韻まで味わいたい時
- 刺さるポイント
- 霊を祓うのではなく、住まいを直すことで人と怪異の距離を整える発想が新鮮
- 向いている人
- 怖い話は好きだけれど、読後に少し救いも残ってほしい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、小野不由美さんの『営繕かるかや怪異譚』をご紹介します。
この作品は、家や建物に起こる怪異を、営繕屋の尾端が関わりながら解きほぐしていく短編連作です。舞台になるのは、町屋、古い屋敷、袋小路、田舎の家など、どこかに人の暮らしの跡が残る場所です。閉めたはずの襖が開く、屋根裏に誰かがいる気配がする、雨の日に鈴の音が聞こえる。住まいの中で起こる小さな異変が、そこで生きてきた人の記憶や感情と結びついていきます。
本作の特徴は、怪異を力ずくで消すのではなく、建物を直すという具体的な行為から向き合うところにあります。尾端は万能の霊能者ではなく、家の傷みや構造、人の暮らし方を見ながら、そこに居続けるものとの距離を整えようとします。そのため、怖さの奥に、住む人の痛みや孤独、残された思いが見えてきます。怪談でありながら、修繕という行為が物語に静かな温度を与えています。
一話ごとに独立して読めるため、長編の重さよりも、日常に差し込む怪異を少しずつ味わいたい時に向いています。家は安心する場所であるはずなのに、同時に過去を抱え込む器でもある。その二面性を丁寧に描くことで、恐怖だけでは終わらない余韻が残ります。ぞっとする話が好きな人はもちろん、怖さの中に人間の切実さや優しさを感じたい人にもおすすめできる一冊です。
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