店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 家族の中に残り続ける違和感をたどる心理ミステリーを読みたい時
- 刺さるポイント
- 失踪した姉が帰ってきた後も、妹だけが消えない疑念を抱え続ける
- 向いている人
- 家族の愛情と記憶のずれが生む不穏さに惹かれる人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、湊かなえさんの『豆の上で眠る』をご紹介します。
主人公の結衣子は、小学生の頃に姉の万佑子が突然いなくなるという出来事を経験します。家族は必死に姉を探し続けますが、時間だけが過ぎていきます。やがて数年後、姉だと名乗る少女が家に戻ってきます。家族は失われた日常を取り戻そうとしますが、結衣子の中には小さな違和感が残ります。その違和感は、成長しても消えないまま、彼女の人生に影を落とし続けます。
本作の魅力は、家族が再会できたはずの場面に、安堵だけではない不穏さを忍ばせているところです。結衣子の疑いは、周囲から見れば冷たく、わがままに見えるかもしれません。けれども、近い存在だからこそ見逃せない感覚があり、誰にも理解されないまま抱え続ける孤独があります。読者は、彼女の疑念が正しいのか、心の傷が生んだ思い込みなのかを見極めようとしながら読み進めることになります。
また、失踪事件の真相だけでなく、残された家族の時間が丁寧に描かれている点も印象的です。帰ってきた人を信じたい気持ちと、それでも確かめずにはいられない気持ち。愛情、罪悪感、期待、恐れが絡み合い、家庭という安全なはずの場所が少しずつ揺らいでいきます。姉妹という近い関係だからこそ、言葉にできない距離がいっそう苦く感じられます。
『豆の上で眠る』は、派手な展開よりも、胸の奥に残る違和感を追いかけるタイプのミステリーです。真実を知りたい気持ちが、必ずしも人を楽にするとは限らない。その苦さまで含めて、家族を描く湊かなえ作品として読み応えのある一冊です。
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