店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 好きな人に言葉が届かないもどかしさを、可笑しく味わいたい時
- 刺さるポイント
- 文通修業に励む大学院生が、他人への手紙ばかり上達して本命への一通にたどり着けない
- 向いている人
- 書簡体小説、こじらせた恋愛、軽妙な青春コメディを読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、森見登美彦さんの『恋文の技術』をご紹介します。
主人公は、京都から離れた実験所で過ごす大学院生です。彼は退屈と孤独をまぎらわせるように、京都にいる友人や先輩、妹たちへ手紙を書き続けます。文通修業と称して、恋の相談に乗ったり、余計な説教をしたり、自分の近況を大げさに語ったりしますが、いちばん大切な相手へ向けた手紙だけは、なかなか書くことができません。
この作品は、手紙だけで進んでいく書簡体の小説です。相手からの返事は直接は示されません。それなのに、主人公がどんな言葉を受け取り、どんな見栄を張り、どんな失敗を重ねているのかが、彼の文章から少しずつ浮かび上がってきます。語りすぎることで、かえって本心が見えてしまう面白さがあります。
恋愛小説として読むと、非常にもどかしい作品です。主人公は言葉を操ることには熱心なのに、肝心の思いをまっすぐ伝える段になると逃げ腰になります。けれど、その不器用さは滑稽であると同時に、誰にでも覚えのある怖さでもあります。好きだと言うための一文が、どれほど重く感じられるかを、この物語は軽やかな笑いで包んでいます。
『恋文の技術』は、手紙を書くこと、誰かを思うこと、自分の格好悪さをごまかしきれないことをめぐる青春小説です。にぎやかな森見節を楽しみながら、言葉が人に届くまでの遠さと、届いたときのささやかな奇跡を味わえる一冊です。
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