店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 吹雪に閉ざされた洋館と見立て殺人の気配に浸りたい時
- 刺さるポイント
- 劇団員たちが迷い込んだ霧越邸で、館の美しさと不穏な現象が少しずつ結びついていく
- 向いている人
- 館もの、ゴシックな空気、古典的な本格ミステリーの様式美を楽しみたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、綾辻行人さんの『霧越邸殺人事件(上)』をご紹介します。
本作は、館シリーズとは別の流れにありながら、綾辻行人さんらしい閉鎖空間と本格ミステリーの魅力を濃く味わえる長編です。舞台は、信州の山中にひっそりと建つ霧越邸。劇団「暗色天幕」の一行は、吹雪の中で道に迷い、その不思議な洋館へ迎え入れられます。
上巻では、まず霧越邸そのものの存在感が強く立ち上がります。館の住人たちはどこか浮世離れしていて、内部には美しい調度や奇妙な部屋が配置されています。外は雪に閉ざされ、劇団員たちは簡単には逃げられない状況に置かれます。歓迎されているようで、何かに誘い込まれているようでもある。その曖昧な感覚が、物語を静かに不安な方向へ押し出していきます。
読みどころは、事件が起こる前から、舞台装置のすべてが謎めいて見えてくるところです。劇団員たちの名前、過去の関係、館に置かれた品々、住人の言葉。ひとつひとつは小さな違和感でも、読み進めるほど、後に大きな意味を持ちそうな気配を帯びていきます。
上巻は、答えに急ぐよりも、雪の中の館へ一歩ずつ足を踏み入れるように読む巻です。幻想的な空気、見立て殺人への予感、登場人物たちの間に漂う緊張が積み重なり、下巻で本格的に動き出す謎解きへの期待を高めてくれます。
『霧越邸殺人事件(上)』は、館ものの美しさと不気味さをじっくり味わいたい人に向いた一冊です。古典的な本格ミステリーの型が好きな人ほど、閉ざされた洋館に満ちる違和感を楽しめるはずです。
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