店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 御手洗潔シリーズの中でも、圧倒的な長さと怪奇趣味に浸りたい時
- 刺さるポイント
- ハリウッド、死海、異形の怪物という遠い題材が、巨大な本格ミステリーへ収束していく
- 向いている人
- 濃厚な長編、異国の空気、大がかりな奇想をじっくり読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、島田荘司さんの『アトポス』をご紹介します。
本作は、御手洗潔シリーズの中でもひときわ大きなスケールを持つ長編です。物語は、ハリウッドに現れる異形の人物、死海周辺の不気味な舞台、そして過去から現在へ伸びる複数の出来事を絡めながら進んでいきます。冒頭から漂うのは、単なる事件の気配ではなく、どこか神話や怪談に近い異様さです。読者は、何が現実の事件で、何が人々の恐怖や思い込みによって膨らんだ幻なのかを見極めながら読み進めることになります。
この作品の魅力は、圧倒的な情報量と、島田荘司さんらしい奇想の大きさにあります。舞台は日本の身近な日常から遠く離れ、映画産業、宗教的なイメージ、異国の地形や伝承が重なります。そのぶん読み口は軽くありませんが、ばらばらに見えていた断片が少しずつひとつの構図を持ち始める過程には、長編ならではの引力があります。
御手洗潔は、目の前の怪奇をそのまま怪奇として受け入れるのではなく、異様に見えるものほど冷静に構造を探ります。血なまぐさい印象や幻想的な情景の奥に、どのような人間の意図が隠れているのか。謎が大きいぶん、推理の着地点もまた大きく、作品全体がひとつの巨大な迷宮のように感じられます。
『アトポス』は、短く切れ味のあるミステリーを求める時よりも、濃密な世界に長く沈みたい時に向いた一冊です。怪奇小説のような不穏さと、本格推理の仕掛けをまとめて味わいたい人におすすめです。
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