店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 謎解きの緊張感と、人の人生がほどけていく静かな余韻を味わいたい時
- 刺さるポイント
- 壁に絵を描き続ける男の沈黙を、周囲の証言から少しずつ読み解いていく構成
- 向いている人
- 派手な事件よりも、隠された過去と人間の孤独に深く触れるミステリーを読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、貫井徳郎さんの長編ミステリー『壁の男』をご紹介します。
物語の舞台は、北関東の小さな集落です。そこでは、家々の壁に子どもの落書きのような、けれど妙に印象に残る絵が描かれています。その絵を描いているのは、伊苅という寡黙な男です。ノンフィクションライターの「私」は、なぜ彼が町の壁に絵を描き続けているのかを知ろうと取材を始めますが、伊苅は多くを語ろうとしません。
この作品のおもしろさは、事件を追うというより、人の沈黙を追っていくところにあります。周囲の人々の話、町の空気、過去に積み重なった出来事が少しずつつながり、ただ奇妙に見えた行為の奥に、ひとりの男の人生が浮かび上がっていきます。
読み味は静かですが、決して淡いだけの物語ではありません。地方の閉塞感、人づきあいの難しさ、才能や孤独をめぐる苦さが、抑えた語りの中ににじみます。絵を描き続ける理由が見えてくるほど、読者は伊苅という人物を単純に評価できなくなっていきます。
『壁の男』は、派手などんでん返しよりも、人物の過去が丁寧に明かされていく構成に惹かれる人に向いた一冊です。謎の答えを知るために読み進めていたはずが、最後には、ひとりの人生の重さを前にして立ち止まるような余韻が残ります。
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