店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 戦争と平和を、ひとりの人生の歩みから考えたい時
- 刺さるポイント
- 被爆者・沼田鈴子さんの経験と、語り継ぐことへの決意をたどる
- 向いている人
- 横山秀夫さんの初期ノンフィクションや、平和学習につながる本を読みたい人に
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、横山秀夫さんの『平和の芽』をご紹介します。
副題は「語りつぐ原爆・沼田鈴子ものがたり」です。広島で被爆し、片足を失った沼田鈴子さんの人生をたどりながら、原爆が一人の人間に何を残したのかを伝える作品です。横山秀夫さんといえば警察小説の印象が強いですが、この本では、記録文学に近いまなざしで、戦争の被害と、その後を生きる人の時間を見つめています。
物語の中心にあるのは、被爆の瞬間だけではありません。その後に続く長い人生です。体に残る傷、婚約者を失った痛み、周囲の無理解や差別、心が荒れてしまう日々。そうした苦しみの中で、沼田さんはやがて、被爆したアオギリの木が芽を吹く姿に出会います。焼けた街に残った命のしるしが、彼女の中で少しずつ意味を持ち始めます。
この本の大切なところは、平和を抽象的な言葉だけで語らないことです。何が起きたのか、失われたものは何か、それでも人はどう立ち上がるのか。子どもにも届くような語り口でありながら、扱っている内容はとても重いものです。だからこそ、読み進めるほど、戦争を知識として学ぶだけではなく、誰かの人生に起きたこととして受け止める感覚が残ります。
『平和の芽』は、横山秀夫さんの作品の中では異色ですが、失われたものに目を凝らし、声になりにくい思いをすくい取る姿勢は、後の作品にも通じています。戦争、被爆、語り継ぐこと、そして希望という言葉を簡単に使わない強さ。そうしたテーマを静かに考えたい人に読んでほしい一冊です。
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