店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 歴史上の大人物を、軽妙で人間くさい視点から読み直したい時
- 刺さるポイント
- 足利尊氏のつかみどころのなさが、弟や重臣たちの奮闘と対比されて浮かび上がる
- 向いている人
- 室町幕府の成立を、人物劇として楽しみたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、垣根涼介さんの『極楽征夷大将軍』をご紹介します。
この作品は、室町幕府の初代将軍、足利尊氏を中心に描く歴史小説です。歴史の教科書では、鎌倉幕府を倒し、新しい武家政権を開いた人物として語られる尊氏。けれど本作の尊氏は、強烈な野心で天下を奪いにいく英雄というより、どこか執着が薄く、何を考えているのかつかみにくい人物として立ち上がります。
物語を動かすのは、そんな尊氏の周囲にいる人々です。弟の足利直義は、危なっかしい兄を支えながら、一族を守るために頭を働かせます。重臣の高師直は、武士の世を作るために現実を見据え、政治の荒波に踏み込んでいきます。本人よりも周囲のほうが必死に動く。その構図が、歴史を重厚にしすぎず、むしろ人間劇として面白くしています。
もちろん、描かれる時代は穏やかではありません。鎌倉幕府の崩壊、後醍醐天皇の新政、武士たちの不満、そして足利家の内部に生まれる亀裂。権力の中心が変わるたびに、人は立場を変え、味方と敵の境目も揺らぎます。理想だけでは国は動かず、計算だけでも人はついてこない。その難しさが、尊氏という不思議な存在を通して見えてきます。
『極楽征夷大将軍』は、歴史の知識を確認するための本というより、乱世で人がどう担がれ、どう流され、どう権力に近づいていくのかを味わう小説です。足利尊氏を名前だけで知っている人ほど、その意外な人物像に引き込まれる一冊です。
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