店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 過酷な修行と人間の執着が絡み合う、濃密な歴史小説を読みたい時
- 刺さるポイント
- 比叡山の千日回峰行に挑む二人の僧が、聖なる修行の奥で名誉、憎しみ、生きる意味を燃やしていく
- 向いている人
- 歴史小説、心理劇、読み応えのある受賞作や候補作を探している人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、住田祐さんの『白鷺立つ』をご紹介します。
この作品は、江戸時代の比叡山延暦寺を舞台に、千日回峰行という過酷な修行へ向かう二人の僧を描いた歴史小説です。失敗すれば命を絶つ覚悟まで求められる修行に、なぜ人は挑むのか。物語は、その問いを宗教的な尊さだけでなく、人間の名誉、劣等感、憎しみ、承認への渇きまで含めて描いていきます。
中心にいるのは、秘密を抱えた玉照院の師弟です。二人は仏の道を歩む者でありながら、心の中には消しがたい感情を抱えています。相手を認めたくない思い、自分の存在を世に刻みたい願い、逃れられない出自への怒り。聖なる山の静けさの中で、そうした俗の感情がかえって激しく燃え上がっていきます。
本作の迫力は、修行の厳しさを描くだけではありません。身体を削る行の描写と、内側で膨らんでいく執念が重なり、読者は二人が何と戦っているのかを考えさせられます。仏道に近づくための行であるはずなのに、そこにあるのは清らかさだけではありません。むしろ、人がどうしようもなく自分に囚われる姿が見えるからこそ、物語に強い熱が生まれています。
第32回松本清張賞受賞作であり、直木賞候補にもなった作品ですが、重厚さの一方で、師弟の対立や秘密の行方を追う緊張感もあります。歴史や仏教に詳しくなくても、極限状態でむき出しになる人間心理の物語として読み進められます。
『白鷺立つ』は、静謐な山の物語でありながら、胸の奥では激しい炎が燃えているような一冊です。読みやすいだけの歴史小説では物足りない人、信仰と欲望がぶつかる濃い心理劇を味わいたい人におすすめできます。
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