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この棚で手に取りたい理由
要約の冒頭と棚の手がかりから、手に取る理由をまとめました。
- 読みどころ
- 今日は、高野和明さんの『踏切の幽霊』をご紹介します。
- 棚のジャンル
- ホラー / ミステリー
- 試し聴き
- 音声レビューで、読む前に作品の雰囲気を確かめられます。
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、高野和明さんの『踏切の幽霊』をご紹介します。
この作品は、都会の片隅にある踏切を舞台にした、ホラーでありミステリーでもある長編小説です。単行本は第169回直木三十五賞の候補作となり、文庫版も刊行されています。怖さだけではなく、事件の背後にある悲しみと、残された人の心の傷に深く踏み込んでいく作品です。
物語の中心にいるのは、妻を亡くしてから仕事への熱を失っている雑誌記者の松田です。彼が担当することになったのは、下北沢の踏切で撮影された一枚の心霊写真でした。写真には、そこにいるはずのない女性の姿が写っていたとされ、同じ踏切では列車の非常停止も相次いでいます。最初は雑誌の怪談企画として始まった取材でしたが、松田はやがて、その場所で起きた女性の死と、報道されないまま埋もれていた出来事へ近づいていきます。
本作の怖さは、怪異そのものよりも、人の無関心や社会の見えにくい暴力にあります。幽霊の正体を探る調査は、同時に一人の女性がどのように生き、なぜ声を上げられなかったのかをたどる作業でもあります。松田自身の喪失感と重なりながら、取材は単なる謎解きではなく、死者の尊厳を取り戻すための行動へ変わっていきます。
ホラーが苦手な方でも、人間ドラマや社会派ミステリーとして入りやすい作品です。静かな怖さ、切ない余韻、そして最後に胸へ残る温度を味わいたい方におすすめしたい一冊です。
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