店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 親しい相手との距離感が、少しずつ怖くなる心理サスペンスを読みたい時
- 刺さるポイント
- 支え合いに見える関係の中で、依存や思い込みが静かに事件を呼び込む
- 向いている人
- 女性同士の友情や家族の閉塞感をめぐるイヤミスが好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、芦沢央(あしざわよう)さんの心理サスペンス『悪いものが、来ませんように』をご紹介します。
物語は、幼いころから深く結びついてきた二人の女性を中心に進みます。助産院で働く紗英は、不妊や夫との関係に悩み、誰にも本心を打ち明けられずにいます。一方、子育て中の奈津子も、母や夫との距離、社会から取り残されていくような孤独を抱えています。二人は互いを理解してくれる唯一の存在のように見えますが、その近さは安心であると同時に、逃げ場のなさも生んでいきます。
やがて紗英の夫が遺体で見つかり、二人の関係は大きく揺らぎます。事件の真相を追う物語でありながら、本作が強く描くのは、相手を思う気持ちと自分を守りたい気持ちが入り混じる怖さです。優しさの言葉が、いつの間にか相手を縛る鎖になる。支え合いに見えていた関係が、別の角度から見ると依存や支配に変わって見える。そうした視点の揺れが、物語全体に不穏な緊張を生んでいます。
読み進めるほど、読者は「悪いもの」とは何だったのかを考えさせられます。それは外からやって来る災厄なのか、それとも人の心の中で育ってしまうものなのか。結末に向かって見え方が変わっていく構成も鮮やかで、読み終えた後には、親密さの中にある危うさがじわりと残ります。人間関係の濃さを扱ったイヤミスを求める人に向いた一冊です。
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