店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 喪失から立ち上がる物語と、二つの時代をまたぐ謎をじっくり追いたい時
- 刺さるポイント
- 妻を失った大学講師が、謎めいた未発表手記を手がかりに作家の死の真相へ近づいていく
- 向いている人
- 重厚な長編ミステリー、作中作、苦味のある再生の物語が好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、貫井徳郎さんの長編ミステリー『追憶のかけら』をご紹介します。
主人公の松嶋は、事故で妻を失い、生きる足場を見失っている大学講師です。娘とも離れて暮らすことになり、研究者としても大きな成果を出せないまま、出口のない日々を過ごしています。そんな彼の前に現れるのが、すでに亡くなった作家が残した未発表の手記です。松嶋はその価値を見いだし、手記に隠された謎を調べることで、自分の人生を立て直そうとします。
物語は、松嶋の現在と、手記に記された過去が重なりながら進んでいきます。最初は文学的な発見に見えたものが、やがて作家の死、家族の秘密、人間の悪意へとつながっていく。その広がりが、長編ならではの読み応えを生みます。読者の反応でも、仕掛けの大きさだけでなく、過去と現在が少しずつ噛み合っていく構成、そして人が絶望の中で何にすがるのかという心理描写に引き込まれる声が目立ちます。
この作品の魅力は、謎解きの快感と、人生の取り返しのつかなさが同時に迫ってくるところです。松嶋は真相を追うほど、他人の秘密だけでなく、自分自身の弱さや未練にも向き合うことになります。救いを求める気持ちが、時に判断を曇らせ、誰かの悪意に足を取られてしまう。そこに貫井作品らしい苦味があります。
『追憶のかけら』は、派手な事件よりも、記憶、喪失、執着が絡み合う重厚なミステリーを読みたい人に向いた一冊です。読み終えたあとには、真実を知ることが必ずしも人を楽にするわけではないという余韻が残ります。
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