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東京會舘とわたし 上 旧館 表紙

東京會舘とわたし 上 旧館

2026年5月27日 更新

今日は、 辻村深月さんの長編小説、 『東京會舘とわたし 上 旧館』についてお話しします。

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気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
実在の場所に積み重なる人の記憶を、ゆっくり味わいたい時
刺さるポイント
大正から昭和へ、東京會舘を訪れる人々の人生が建物の歴史とともに描かれる
向いている人
歴史の中の小さな人生を描く、温かな連作長編が好きな人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、 辻村深月さんの長編小説、 『東京會舘とわたし 上 旧館』についてお話しします。

舞台となるのは、丸の内に実在する東京會舘です。 大正時代に社交の殿堂として生まれ、結婚式や宴会、記者会見、コンサートなど、さまざまな人の晴れの日や人生の節目を見つめてきた場所。 上巻では、その旧館をめぐる時間が、大正から昭和へとゆっくり流れていきます。

この作品の主人公は、特定の一人だけではありません。 會舘で働く人、訪れる人、そこで特別な一日を迎える人。 時代ごとに異なる人物たちの物語が重なり、建物そのものが記憶を抱えているように感じられます。 戦争や社会の変化に揺さぶられながらも、人は誰かをもてなし、何かを祝おうとする。 その営みの尊さが、静かに伝わってきます。

上巻で印象的なのは、華やかな場所を描きながら、視線がとても人間的なところです。 きらびやかな料理や格式ある空間の向こうには、準備を重ねる人の手があり、緊張しながらその日を迎える人の心があります。 歴史の大きな出来事も、ひとりひとりの生活の中へ入り込み、ささやかな選択や別れを変えていきます。

辻村深月さんらしい心理描写は、本作では強い謎や衝撃よりも、時間を越えて残る思いに向けられています。 誰かがその場所で笑ったこと。 大切な人と食卓を囲んだこと。 未来を信じるために、少しだけ背筋を伸ばしたこと。 そうした小さな記憶が積み重なり、東京會舘という場所を形づくっていきます。

『東京會舘とわたし 上 旧館』は、場所に宿る物語を味わう一冊です。 時代小説のような厚みと、ヒューマンドラマの温かさを合わせ持ち、下巻へ続く長い時間の入口になっています。

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