店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 封じた記憶が現在の事件へ染み出してくるタイプのミステリーを読みたい時
- 刺さるポイント
- 兄の死に疑問を抱く青年が、幼い日の記憶と連続する惨劇の奥へ踏み込んでいく
- 向いている人
- 心理サスペンス、記憶の謎、苦い余韻を持つホラー寄りミステリーが好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、綾辻行人さんの『黄昏の囁き』をご紹介します。
本作は、「囁き」シリーズ第三作にあたる長編ミステリーです。物語の中心にいるのは、兄の急死に疑問を抱く医学生の翔二です。事故として片づけられそうな出来事の奥に何かがあると感じた翔二は、元予備校講師の占部とともに、兄の過去と周囲の人間関係をたどっていきます。
事件を追ううちに浮かび上がるのは、幼いころの記憶と、長いあいだ心の奥に封じられてきたものです。関係者たちは、ある言葉や気配に異様な怯えを見せます。やがて、現在の死と過去の出来事が重なり、翔二自身も忘れていたはずの記憶へ引き寄せられていきます。
この作品の読みどころは、過去を掘り返す心理サスペンスとしての力です。誰が犯人なのかという謎だけでなく、なぜ人は記憶を閉じ込めるのか、閉じ込めたはずのものがどんな形で戻ってくるのかが、物語全体を支えています。恐怖は外から襲ってくるだけではなく、自分の内側からも立ち上がってくるものとして描かれます。
シリーズ三作目らしく、ホラーと本格ミステリーの混ざり方はより落ち着き、苦い余韻が強く残ります。血なまぐさい事件の背後にあるのは、単純な悪意だけではありません。家族、幼なじみ、土地の記憶、子どものころの罪悪感のようなものが重なり、真相が見えたあとも簡単には割り切れない読後感を残します。
『黄昏の囁き』は、記憶の謎を追うミステリーや、心理の暗がりに踏み込むホラーが好きな人に向いた一冊です。静かに沈んでいた過去が、夕暮れのように現在を染めていく作品です。
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