店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 家族という言葉の温かさに、どうしても違和感を覚える時
- 刺さるポイント
- 母性や家庭への飢えを正面から描き、家族欲という感覚の不気味さと切実さを浮かび上がらせる
- 向いている人
- 家族小説の形を借りて、依存や嫌悪の深い部分まで踏み込む作品を読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、 村田沙耶香さんの作品、 『タダイマトビラ』についてお話しします。
『タダイマトビラ』は、家族への渇きと嫌悪を、村田沙耶香さんらしい異様な感覚で描いた長編小説です。主人公の恵奈は、母性に満たされた家庭ではなく、どこか空洞のような家で育ちます。彼女はそこで、家族を求める気持ちを自分なりの密かな行為に変えながら、満たされない感情を抱えて生きています。
この作品で扱われる「家族」は、安心できる場所としては描かれません。むしろ、欲望の対象であり、支配の形であり、ときには逃げ出したくなるものです。恵奈は家から離れようとし、恋人との生活を始めますが、そこでも家族への飢えは別の形で顔を出します。誰かと一緒にいることが救いになるどころか、互いを自分の欠落を埋める道具のように扱ってしまう怖さがあります。
村田作品の中でも、この本は家族という言葉の手触りを徹底して疑います。母親、恋人、帰る場所、ただいまと言える扉。普通なら温かく見えるものが、主人公の視点を通すと奇妙な装置のように見えてくる。そこに、この作品ならではの息苦しさがあります。
『タダイマトビラ』は、家族を否定するだけの物語ではありません。人がなぜ家族を求めてしまうのか、そして求めるほどにどうして傷ついてしまうのかを、かなり痛いところまで掘り下げます。家庭の温かさを信じたい気持ちと、その言葉に押しつぶされそうになる感覚の両方を味わえる一冊です。
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