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乳と卵 表紙

乳と卵

2026年5月27日 更新

今日は、川上未映子さんの『乳と卵』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
身体と言葉のずれにざわつく物語を読みたい時
刺さるポイント
母と娘、姉妹、女同士の距離感が独特の文体で立ち上がる
向いている人
芥川賞作品や、読み心地に強い個性のある文学を試したい人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、川上未映子さんの『乳と卵』をご紹介します。

物語は、語り手である「わたし」のもとへ、大阪から姉の巻子と、その娘の緑子がやって来るところから始まります。巻子は豊胸手術に強く心を奪われていて、緑子は母とは口をきかず、ノートに言葉を書きつけることで自分の内側を保っています。東京で過ごす短い三日間の中で、三人の間にある言葉にならない苛立ち、寂しさ、戸惑いが少しずつ表に出てきます。

本作の魅力は、筋を追う面白さだけではなく、言葉そのものの勢いにあります。会話のテンポ、心の中の独白、身体への違和感が混ざり合い、読んでいると三人の生活音や呼吸がすぐ近くにあるように感じられます。読みやすい物語というより、言葉の渦に巻き込まれていく作品です。その分、合う合わないは分かれますが、引っかかりの強さが大きな個性になっています。

巻子がこだわる胸のこと、緑子が抱える成長への不安、語り手が二人を見つめながら感じる居心地の悪さ。ここで描かれる身体は、ただの外見ではありません。自分のもののはずなのに、自分だけでは決められないものとして立ち上がります。母であること、娘であること、女であること。それぞれの立場が、優しさだけでは収まらない摩擦を生み出します。

『乳と卵』は、家族の小さな出来事を扱いながら、身体と言葉、生きづらさと切実さを濃く描いた一冊です。きれいに整理された感動ではなく、ざらざらした本音が読みたい人に向いています。短い作品ですが、読み終えたあとには、誰かと話すこと、黙ること、自分の身体と付き合うことの重さが、じわりと残ります。

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