店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 夏の記憶に残る、明るさと不穏さを読みたい時
- 刺さるポイント
- 少女たちが出会う秘密や痛みを、感覚的な描写で焼きつける
- 向いている人
- 子どもの頃の記憶、危うさ、言葉にしにくい心理に惹かれる人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、江國香織さんの連作短編集 『すいかの匂い』をご紹介します。
この本には、十一人の少女たちの夏の記憶が描かれています。 海辺、校庭、家の中、遊びの途中。 どこにでもありそうな明るい風景の中で、子どもたちはふいに大人の世界の闇や、自分の中にある知らなかった感情に触れてしまいます。 その瞬間は大きな事件として説明されるわけではありません。 けれど、すいかの匂いやアイスの感触のように、身体のどこかに残り続ける記憶として刻まれていきます。
江國香織さんは、少女時代を懐かしいだけのものとして描きません。 子どもには子どもの残酷さがあり、秘密を持つことの高揚もあります。 大人から見れば小さな出来事でも、本人にとっては世界の見え方が変わってしまうほど大きい。 この短編集は、そうした心の揺れを、夏の光の中にそっと浮かび上がらせます。
読み味は透明で、ところどころに甘さがあります。 しかしその甘さの底には、困惑や痛み、自分でもうまく扱えない邪気のようなものが潜んでいます。 無邪気な時代に戻る話ではなく、無邪気ではいられなくなる瞬間を見つめる話です。 だからこそ、読み終えると、子どもの頃の記憶がただ懐かしいだけではなかったことに気づかされます。
『すいかの匂い』は、夏の明るさと心の暗がりを同時に味わえる一冊です。 短い物語の連なりの中に、誰にも言えなかった感情や、今も名前をつけられない記憶が静かに息づいています。
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