店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 恋愛や家族の形を『当たり前』として受け取れなくなった時
- 刺さるポイント
- 性愛と生殖が切り離された社会を描き、清潔で合理的な世界の不気味さを浮かび上がらせる
- 向いている人
- 近未来SFの形で、家族制度や身体感覚を根本から問い直したい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、 村田沙耶香さんの作品、 『消滅世界』についてお話しします。
『消滅世界』は、恋愛、性、生殖、家族といった言葉の意味が、私たちの世界とは大きく変わってしまった近未来を描く長編小説です。この世界では、子どもは人工授精で生まれることが自然な形とされ、夫婦の間に性の関係を持つことは不潔で古いものとして見られます。
主人公の雨音は、両親が愛し合って自分を生んだという事実に、どこか居心地の悪さを抱えながら育ちます。大人になった彼女は、周囲が受け入れている新しい価値観に合わせようとしますが、心と身体の奥に残る感覚は簡単には消えません。清潔で合理的に見える社会の中で、何が自然で、何が異常なのかが少しずつわからなくなっていきます。
物語が進むにつれて、家族という最小の共同体さえ、別の仕組みに置き換えられていきます。そこにあるのは、暴力的な管理社会というよりも、人々が善意や合理性の名のもとに進んで受け入れていく新しい世界です。だからこそ怖い。誰かに強制されたのではなく、みんながそれを正しいと信じることで、古い感情や身体の記憶が消えていくからです。
『消滅世界』は、極端な設定を使いながら、現代の私たちが持っている家族観や恋愛観を映し返します。読む人によって、ユートピアにもディストピアにも見える作品です。気持ち悪さと面白さが同時に押し寄せる読後感を味わいたい人に向いた一冊です。
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