店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 王道の本格ミステリーに、予想外の設定が混ざる驚きを味わいたい時
- 刺さるポイント
- 隔絶されたペンションで起きる連続殺人が、特殊な状況と論理の両方で読者を揺さぶる
- 向いている人
- 本格推理のフェアな手がかりと、ジャンル越境の大胆さを同時に楽しみたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、今村昌弘さんの『屍人荘の殺人』をご紹介します。
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と明智恭介は、映研の夏合宿に参加するため、大学の先輩たちと山奥のペンションへ向かいます。そこに現れるのが、謎めいた探偵少女の剣崎比留子。楽しい合宿になるはずだった時間は、思いもよらない危機によって一変し、参加者たちは外部から切り離された状況に追い込まれます。そして翌朝、密室めいた部屋で死体が発見され、連続殺人の幕が上がります。
この作品の面白さは、いわゆる館もの、孤立した舞台、限られた容疑者という本格ミステリーの型を踏まえながら、その前提を大胆にひねっているところにあります。事件を解くためには、誰が、どうやって、なぜ殺したのかを考えるだけでは足りません。特殊な状況そのものが、犯行の可能性や不可能性を変えていくため、読者は常識の置き方を何度も調整しながら読み進めることになります。
一方で、奇抜な設定に頼りきった物語ではありません。閉ざされた空間で人が疑い合う緊張感、手がかりを拾い直していく推理の快感、そして探偵役の鮮やかな存在感がきちんと物語を支えています。葉村の語りは読者に近く、異常な事態の中でもユーモアや戸惑いを失わないため、非日常の怖さと謎解きの楽しさが同時に立ち上がります。
『屍人荘の殺人』は、本格ミステリーを読み慣れた人ほど、その組み替え方に驚かされる一冊です。ミステリーとしての論理を楽しみたい人にも、ジャンルを越えたエンターテインメントを味わいたい人にも向いています。読み終えたあとには、こんな状況でも推理小説は成立するのかという驚きと、物語の大胆な設計への納得が残ります。
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