店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 一人の人生を、家族と海外生活の記憶からじっくり追いたい時
- 刺さるポイント
- イラン、大阪、エジプトを移動する少年期が、信じるものを探す長い旅の入口になる
- 向いている人
- 家族小説や成長小説を、大きな物語のうねりの中で読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、西加奈子さんの『サラバ! 上』をご紹介します。
この作品は、圷歩という一人の男性の人生を、誕生からたどっていく長編小説の上巻です。歩は、父の赴任先であるイランで生まれます。華やかで人を惹きつける母、どこか激しさを抱えた姉、そして家庭の中で自分の位置を測り続ける歩。イラン革命をきっかけに一家は日本へ戻り、大阪での生活を経て、今度はエジプトへ向かいます。
上巻で描かれるのは、海外生活の珍しさだけではありません。子どもの歩が、家族の中でどう振る舞えば安全なのか、周囲とどう合わせれば傷つかずに済むのかを、少しずつ覚えていく過程です。姉はまわりから浮き、母は自分の魅力と孤独を同時に抱え、父もまた家族の中心にいながらどこか遠い。歩はそんな家族の空気を読みながら、普通であろうとすることで自分を守っていきます。
物語の魅力は、個性的な家族をただ奇妙に描くのではなく、その中で育つ子どもの感覚を生々しくすくい取るところにあります。大阪の生活、エジプトでの出会い、宗教や友情や異文化との距離。ひとつひとつの経験は、歩にとって楽しい思い出であると同時に、後の人生に深く残る問いにもなっていきます。
『サラバ! 上』は、物語全体の大きな助走にあたる巻です。まだ何かを失う前のまぶしさと、すでに崩れ始めている家族の気配が同居しています。自分は誰なのか、何を信じて生きるのか。その問いが、少年期の記憶の中から静かに立ち上がってくる一冊です。
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