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坂の途中の家 表紙

坂の途中の家

2026年5月27日 更新

今日は、角田光代さんの『坂の途中の家』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
母であることの重さや、家族の閉塞感を深く考えたい時
刺さるポイント
裁判員になった女性が、虐待事件を通して自分の家庭を見つめ直す
向いている人
心理描写の密度が高い社会派小説をじっくり読みたい人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、角田光代さんの『坂の途中の家』をご紹介します。

物語の主人公は、幼い娘を育てる里沙子です。彼女はある日、乳幼児の虐待死事件を扱う裁判の補充裁判員に選ばれます。被告人は、自分の子どもを死なせた母親。最初は遠い事件として受け止めていた里沙子ですが、法廷で語られる証言に触れるうち、少しずつ自分自身の暮らしと重ね合わせていきます。

この作品が見つめるのは、事件の真相だけではありません。母親ならできて当然、家族なら支え合えて当然、という言葉の裏で、どれだけの人が孤立しているのか。育児の疲労、夫とのすれ違い、実母との関係、社会からの無言の評価。里沙子の心は、裁判を追うほどに揺さぶられ、自分の家の中にある小さなひび割れを意識するようになります。

読む側もまた、簡単な位置取りを許されません。被告人を責めることはできても、彼女の置かれた状況を完全に他人事として切り離せるのか。家族の中で、誰が誰を追い詰め、誰が何を見ないふりをしていたのか。物語は、答えを急がず、読者の足元にも同じ問いを置いていきます。

角田光代さんの筆致は、日常の細部に潜む息苦しさを鋭くすくい取ります。台所、坂道、子どもの泣き声、夫婦の会話。どれもありふれた場面でありながら、積み重なると逃げ場のない重さを持ち始めます。

『坂の途中の家』は、裁判員裁判を入り口に、母性と家族の光と闇を描く心理小説です。読み終えたあと、自分の中にある判断の基準まで揺さぶられる一冊です。

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