店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 大人同士のこじれた関係と、長い年月でしか出せない答えを読みたい時
- 刺さるポイント
- 妹の夫であり幼なじみでもある男との同居が、三人の過去と現在を静かにほどいていく
- 向いている人
- 恋愛だけでなく、家族、結婚、仕事、友情が絡み合う濃い人間ドラマを読みたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、一穂ミチさんの『off you go』をご紹介します。
この作品は、新聞社で働く良時のもとへ、妹の夫である密が転がり込んでくるところから始まります。海外赴任を終えて帰国した密は、妻である十和子から離婚を告げられ、行き場を失っています。良時にとって密は、義理の弟であると同時に、幼い頃から長く知る相手でもあります。身体が弱かった子ども時代、妹の十和子と密が築いてきた関係、そのそばにいた自分。良時は複雑な距離を抱えたまま、密との同居を受け入れます。
本作で描かれるのは、分かりやすく始まる恋ではありません。三人の間には、家族のような近さ、友人のような気安さ、言葉にしないまま積もった執着があります。誰か一人が悪いと切り分けられる話ではなく、それぞれが相手を大切にしてきたからこそ、簡単にはほどけない関係になっている。そこに大人の苦さがあります。
密の軽さや身勝手に見えるふるまい、良時の穏やかさの奥にある感情、十和子の強さと選択。物語は現在の同居生活だけでなく、過去の時間も行き来しながら、三人がどうつながり、どう離れようとしてきたのかを見せていきます。新聞社という仕事の場の空気も、彼らの不器用な生き方に現実味を与えています。
『off you go』は、若さの勢いでは片づかない恋と人生を描いた一冊です。家族であり、同僚であり、友人でありながら、それだけでは説明できない相手がいる。そんな関係の名前を探すような読後感があります。時間をかけてこじれた感情が、少しずつ自分の居場所を見つけていく物語を読みたい人におすすめです。
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