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弥勒の月 表紙

弥勒の月

2026年5月27日 更新

今日は、あさのあつこさんの『弥勒の月』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
江戸の闇と人の業を、静かな緊張感のある時代ミステリーで味わいたい時
刺さるポイント
妻を亡くした小間物問屋の主人と、違和感を嗅ぎ取った同心の視線が交差していく
向いている人
時代小説、心理戦のあるミステリー、暗い余韻を残す人間ドラマが好きな人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、あさのあつこさんの『弥勒の月』をご紹介します。

『弥勒の月』は、江戸を舞台にした「弥勒」シリーズの入口となる時代小説です。物語は、小間物問屋の若おかみ、おりんの水死から始まります。一見すれば身投げにも見える出来事ですが、妻の死を前にした主人、遠野屋清之介の様子に、同心の木暮信次郎は言いようのない違和感を覚えます。信次郎は岡っ引の伊佐治とともに、事件の奥へ踏み込んでいきます。

この作品は、派手な捕物よりも、人の心の奥に沈んだものを見つめる緊張で読ませます。清之介は穏やかで品のある商人に見えますが、その内側には簡単に読み取れない暗がりがあります。信次郎もまた、正義感だけで動く分かりやすい同心ではありません。二人の間には、相手を見抜こうとする視線と、見抜かれまいとする沈黙があり、その距離感が物語を強く引っ張ります。

江戸の町の空気も印象的です。店の営み、人々の噂、身分や家のしがらみが、事件の背景に静かに重なっていきます。誰かの死をめぐる謎は、やがて愛情、執着、過去の傷へとつながり、読者は善悪だけでは割り切れない人間の業に触れていきます。

『弥勒の月』は、謎解きの面白さと、陰影の濃い人物描写を同時に味わえる一冊です。明るい人情ものというより、江戸の闇に潜む心の揺れをじっくり追う作品です。時代小説に心理ミステリーの深みを求める人におすすめです。

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