店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 少し先の社会を舞台に、人の欲望や愛情のこじれを読みたい時
- 刺さるポイント
- 架空の制度や技術が、推し活、死生観、承認欲求の危うさを照らし出す
- 向いている人
- 現実から半歩ずれた設定で、人間の怖さと切なさを味わう短編集が好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、芦沢央(あしざわよう)さんの短編集『魂婚心中』をご紹介します。
この作品集の舞台にあるのは、私たちの現実とよく似ていながら、どこか少しだけ違う社会です。死後の結婚を扱うマッチングアプリ、デジタル上の評判や検索結果、ゲーム的な仕組みが日常に入り込んだ世界。便利で新しいはずの制度や技術が、人の寂しさ、怒り、承認されたい気持ちを思いがけない方向へ押し出していきます。
表題作では、死後結婚という仕組みが広まった社会で、推しのアイドルに関わる秘密を見つけた女性が感情を暴走させていきます。奇抜な設定に見えて、そこに描かれているのは、誰かを強く思う気持ちが自分の都合や執着に変わってしまう怖さです。ほかの収録作でも、現代的な仕組みの中で、善意、悪意、恋愛、復讐、自己正当化が複雑に絡み合っていきます。
『魂婚心中』は、近未来風の想像力と芦沢央さんらしい心理の鋭さが合わさった一冊です。設定は大胆でも、登場人物の感情はどこか身近で、読んでいるうちに「この世界は本当に遠いのだろうか」と感じさせられます。ミステリーとしての不穏さに加えて、愛やつながりを求める気持ちの危うさが残る短編集です。
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