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君は素知らぬ顔で 表紙

君は素知らぬ顔で

2026年5月27日 更新

今日は、 飛鳥井千砂さんの作品、 『君は素知らぬ顔で』についてお話しします。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
何気ない日常の選択が、誰かの人生に触れていると感じたい時
刺さるポイント
六つの時代と主人公をつなぎながら、不器用な恋や生活の機微を描く連作小説
向いている人
大事件よりも、人の心が少し動く瞬間を味わいたい人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、 飛鳥井千砂さんの作品、 『君は素知らぬ顔で』についてお話しします。

この作品は、六つの物語がゆるやかにつながっていく連作小説です。恋人との関係に言葉を飲み込んでしまう人、前に進みたいのに過去の気配に引き戻される人、何気ない占いや季節の知らせに心を揺らす人。登場人物たちは、派手な事件の中にいるわけではありません。それでも、それぞれの毎日は小さな選択の連続で、誰かの一言や態度によって思いがけず形を変えていきます。

物語の魅力は、人と人の関係が直線的に進まないところにあります。好きだからうまくいくとは限らないし、距離を置いたから忘れられるとも限らない。相手は何も知らない顔をしているのに、自分の中では感情だけが大きく波立っている。そうした、説明しにくい心の揺れを、飛鳥井千砂さんは日常の会話や街の空気の中に自然に置いていきます。

連作として読むと、別々に見えた人生が少しずつ響き合っていることにも気づきます。ある人にとっては通り過ぎただけの出来事が、別の人には忘れられない記憶になる。時代や場所が変わっても、人は誰かの影響を受け、知らないうちに誰かへ影響を残している。そのささやかなつながりが、読後に静かな余韻を残します。

章ごとに主人公が変わるため、読み味は軽やかですが、描かれている感情は意外に深いものです。恋人に強く出られない弱さ、昔の自分を思い出す気まずさ、何も知らない誰かの存在に励まされる瞬間。ひとつひとつの話は日常の断片のようでありながら、読み進めるうちに、人生は自分だけで完結していないのだと感じさせます。強いメッセージを押しつけず、偶然と記憶の重なりで人物を見せていく構成も魅力です。

『君は素知らぬ顔で』は、恋愛小説でありながら、人生のすれ違いを描いた短編集としても読める一冊です。大きな結末より、心の角度が少し変わる瞬間を楽しみたい人におすすめです。

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