店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 支配と依存が家族の形をまとう怖さを、社会派サスペンスとして読みたい時
- 刺さるポイント
- 民事不介入の隙間から、疑似家族の暴力と洗脳が連鎖していく構図が迫る
- 向いている人
- 現実の事件を思わせる重い題材や、善悪だけでは割り切れない犯罪小説を求める人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、葉真中顕さんのクライムサスペンス『家族』をご紹介します。
物語の発端は、一人の女性が助けを求めて交番へ駆け込む場面です。彼女は以前から、身近な家族がおかしな女に支配されていると訴えていました。けれどその時点では、家庭内のもめごととして扱われ、事件としては動きませんでした。やがて彼女の保護をきっかけに、長いあいだ表に出なかった死と暴力が次々に浮かび上がっていきます。
中心にいるのは、夜戸瑠璃子という女です。彼女は血縁とは別のかたちで人を集め、疑似家族を作り、その内側で支配を強めていきます。優しさや保護の顔をしながら、相手の不安、孤独、弱みをつかみ、逃げ道をふさいでいく。その過程は派手な犯罪以上に怖く、人がなぜ逃げられなくなるのかをじわじわと見せてきます。
本作で強く響くのは、「家族」という言葉の危うさです。家族だから助け合う。家族だから我慢する。家族だから外からは踏み込みにくい。そうした常識が、時に暴力を隠す壁になってしまう。葉真中顕さんは、制度や警察の限界、地域社会の見て見ぬふり、そして人が支配されていく心理を、容赦のない筆致で描いています。
読むには重い作品です。けれど、ただ残酷な事件を追うだけの小説ではありません。誰かを救うはずのつながりが、なぜ人を縛る檻になってしまうのか。外から見れば不自然な関係が、内側の人にはなぜ日常として続いてしまうのか。そこに踏み込むことで、読後には社会の見え方が少し変わります。
『家族』は、明るい救いを求める読書には向きません。それでも、犯罪小説を通して現実の暗部に目を向けたい人には、強く残る一冊です。
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