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風に立つ

2026年5月27日 更新

今日は、柚月裕子さんの長編小説『風に立つ』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
親子の不器用な距離と、再生の物語にじっくり浸りたい時
刺さるポイント
南部鉄器の工房に少年を迎え入れたことで、職人一家の沈黙と過去が少しずつほどけていく
向いている人
事件よりも、人が変わっていく時間を丁寧に味わいたい人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、柚月裕子さんの長編小説『風に立つ』をご紹介します。

物語の舞台は、岩手県盛岡市の南部鉄器工房です。職人として腕を認められている小原孝雄は、家族に多くを語らず、仕事に人生を注いできた父親です。その息子である悟は、父の職人としての力を認めながらも、親子としては深い溝を感じています。そんな父が突然、問題を起こして家裁に送られた少年を一定期間預かると言い出します。

工房にやって来た少年、春斗は、簡単に心を開くわけではありません。悟もまた、父の決断に納得できないまま、少年との生活を始めることになります。鉄を熱し、叩き、形にしていく工房の日々の中で、春斗の抱える痛みや、小原家の中に長く置き去りにされていた感情が少しずつ見えてきます。

本作の魅力は、大きな事件で物語を引っ張るのではなく、人と人が同じ場所で時間を過ごすことで変わっていく様子を丁寧に描いているところです。父と息子、預けられた少年と受け入れる大人。どの関係にも、言葉にしなかった後悔や、うまく伝えられなかった愛情があります。だからこそ、わずかな会話や行動の変化が重く響きます。

『風に立つ』は、柚月作品の中でも静かな人間ドラマとして読める一冊です。家族だから分かり合えるとは限らない。それでも、向き合う時間の中で何かが変わることもある。そんな再生の手触りが、読後にゆっくり残ります。

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