店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 家族や身体への違和感を、初期作品ならではの鋭い感覚で読みたい時
- 刺さるポイント
- 思春期の少女が抱える嫌悪、執着、孤独を、静かな日常の中で不穏に浮かび上がらせる
- 向いている人
- 村田沙耶香さんの出発点に触れ、後年の作品につながる感覚を味わいたい人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、 村田沙耶香さんの作品、 『授乳』についてお話しします。
『授乳』は、村田沙耶香さんのデビュー作を含む短編集です。表題作の主人公は、受験を控えた少女。家庭教師の先生が家にやってくる時間をきっかけに、彼女の中では家族や身体への違和感、他人への意識が少しずつ形を変えていきます。
この作品で印象的なのは、何か大きな事件が起こる前から、家の空気そのものがすでに不穏であることです。母への苛立ち、父への生理的な距離感、先生との間に生まれる特別な感覚。どれもはっきり名づけられないまま、少女の内側で濃くなっていきます。思春期の心が、清らかさや成長物語としてではなく、もっとざらついたものとして描かれているところに、この本の強さがあります。
収録作には、恋人や空想、家族の部屋をめぐる物語も置かれています。どの作品でも、主人公たちは周囲が用意した普通の感情にうまく収まりません。愛情のように見えるものが嫌悪に近づき、親密さのように見えるものが支配や遊びに変わる。その境目の揺れが、静かな文体の中でじわじわと迫ってきます。
後年の『コンビニ人間』や『殺人出産』のような大胆な設定とは違い、『授乳』は日常の密室から始まります。けれど、普通の家、普通の会話、普通の関係の中に、すでに村田沙耶香さんらしい異物感があります。初期作品ならではの生々しさと、言葉にしにくい不快さを味わえる一冊です。
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