店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 悩みを深刻に抱え込みすぎた時、笑いで少し肩の力を抜きたい時
- 刺さるポイント
- 型破りな精神科医と患者たちのやりとりが、弱さを肯定する読後感へ変わる
- 向いている人
- 医療ものの重さより、ユーモアと人間味のある短編連作を楽しみたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、 奥田英朗さんの短編連作、 『イン・ザ・プール』 についてお話しします。
この作品の中心にいるのは、 伊良部一郎という、 かなり変わった精神科医です。
病院の地下にある神経科を訪れる人たちは、 それぞれ切実な悩みを抱えています。 プールで泳がずにはいられない男。 携帯電話が手放せない高校生。 自分ではどうにもならない症状に戸惑う人たち。
ところが、 彼らを待っている伊良部は、 頼れる名医というより、 患者以上に自由で、 常識から少し外れた人物です。 勝手に興味を持ち、 無遠慮に踏み込み、 ときには治療なのか悪ふざけなのか わからない行動を取ります。
それでも不思議なことに、 患者たちは伊良部に振り回されるうちに、 自分の悩みを真正面から見つめ直していきます。
この本のおもしろさは、 心の不調を重く描きすぎないところにあります。 悩んでいる本人にとっては深刻でも、 少し離れて見ると、 そこには人間らしいおかしみがある。 伊良部の暴走は乱暴に見えますが、 読んでいるうちに、 人はもっと不格好でもいいのかもしれない、 と思えてきます。
短編ごとに患者は変わりますが、 どの話にも、 完璧に生きられない人へのやさしさがあります。 病気をきれいに解決する物語ではなく、 悩みとの距離の取り方を、 笑いながら少し変えてくれる物語です。
『イン・ザ・プール』は、 疲れている時ほど効いてくる一冊です。 深刻さに飲み込まれそうな夜に、 ばかばかしさの中から救いを見つけたい人へ、 おすすめしたい作品です。
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