店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 人の評判や証言の奥に潜む、見栄と悪意のざらつきを読みたい時
- 刺さるポイント
- 一家惨殺事件をめぐる証言が、被害者と語り手の印象を少しずつ反転させていく
- 向いている人
- 社会派ミステリーや、後味の苦い人間観察に惹かれる人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、貫井徳郎さんの社会派ミステリー『愚行録』をご紹介します。
物語は、誰もがうらやむような一家が惨殺された事件をめぐって進みます。事件そのものの残酷さよりも前面に出てくるのは、周囲の人々が語る被害者一家の姿です。近所の人、学生時代の知人、職場の関係者。それぞれの証言が積み重なるうちに、理想的に見えた家族像は少しずつ歪みを帯びていきます。
この作品では、語る人たちもまた安全な場所にはいません。誰かを評価する言葉の中に、羨望や嫉妬、保身、階層意識がにじみます。事件の真相に近づいているようでいて、同時に語り手自身の愚かさも露わになっていく。その構成が、作品全体に冷たい緊張感を与えています。
読み味は決して軽くありません。けれど、人が他人を見る時にどれほど都合よく物語を作ってしまうのか、善意や常識の顔をした言葉がどれほど残酷になり得るのかを、鋭く突きつけてきます。犯人探しのミステリーでありながら、読み終えるころには、事件の外側にある社会の空気まで見えてきます。
『愚行録』は、明快な勧善懲悪よりも、人間関係の暗部や後味の苦さを味わいたい人に向いた一冊です。読み終えたあと、誰かについて語る自分の言葉にも、少し慎重になってしまうかもしれません。
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