店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- スリルの中に家族小説の温かさもある殺し屋ものを読みたい時
- 刺さるポイント
- 超一流の殺し屋でありながら家庭では妻に頭が上がらない兜の二重生活が、笑いと切なさを生む
- 向いている人
- 裏社会の緊張感と、家族を守りたい男の不器用さを同時に楽しみたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、伊坂幸太郎さんの『AX アックス』をご紹介します。
この作品は、殺し屋シリーズの一作でありながら、家族小説としての味わいも強い長編です。主人公の兜は、仕事では冷静で腕の立つプロの殺し屋です。ところが家に帰ると、妻の顔色をうかがい、息子との距離感に悩む、ごく普通の父親のような姿を見せます。物騒な仕事を続けながらも、彼の本音はできることなら引退したいというものです。
兜の二重生活は、ユーモラスでありながら切実です。外では命を奪う側にいる男が、家庭では妻のひと言に縮こまり、息子の成長に戸惑う。その落差が笑いを誘いますが、読み進めるほど、彼が守ろうとしているものの重さが見えてきます。危険な仕事を抜けたいのに抜けられない。家族には真実を言えない。それでも普通の暮らしにしがみつこうとする姿が、物語の芯になっています。
伊坂作品らしい会話の軽さ、裏社会の奇妙なルール、思いがけないつながりは本作でも健在です。殺し屋たちの駆け引きには緊張感がありますが、兜の家庭内での弱さがあることで、単なるアクションにはならず、人間味のある物語として読めます。強い人物が本当に恐れているものは何か、守りたいもののためにどこまで変われるのかが、静かに問われます。
シリーズ作品として読むとより楽しい一冊ですが、兜という人物の物語として単独でも入りやすい作品です。殺し屋もののスリルを味わいたい人、同時に親子や夫婦の不器用な関係に触れたい人に向いています。読み終えたあとには、危険な世界の話だったはずなのに、家族へのまなざしが強く残ります。
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