店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 美しい題名の奥にある生理的な恐怖へ踏み込みたい時
- 刺さるポイント
- 死への恐怖が快楽へ反転していく異変を、医学とホラーの視点で追う
- 向いている人
- じわじわ迫る不穏さと科学的な怖さを好む人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、貴志祐介さんの『天使の囀り』をご紹介します。
物語の中心にいるのは、終末期医療に携わる精神科医の北島早苗です。彼女の恋人である作家の高梨は、死を極端に恐れる人物でした。ところが、アマゾン奥地への調査行に参加して帰国したあと、彼は以前とは別人のように変わってしまいます。そして、死を怖れていたはずの彼が、自ら死へ近づくような行動を取ります。やがて、同じ調査隊の関係者にも異様な出来事が続いていることが分かってきます。
本作は、美しい題名から受ける印象とは裏腹に、かなり濃い不穏さを持つホラーです。怪異そのものが突然現れるのではなく、人の認識や欲望、身体の感覚が少しずつ変質していくところに怖さがあります。早苗は医師として、そして恋人を失った当事者として、何が起きたのかを追います。その視点があるため、物語は感情的な恐怖だけでなく、原因を突き止めようとする調査小説としても進んでいきます。
読みどころは、死への恐怖という人間の根源的な感情が、まったく別のものへ変わっていく過程です。なぜ彼らは恐怖から逃げるのではなく、むしろ惹かれていくのか。その謎が明らかになるにつれ、読者は生理的な嫌悪と知的な興味のあいだで揺さぶられます。
『天使の囀り』は、心理ホラーであり、医学的なサスペンスでもあります。派手なショックよりも、説明がついてしまうからこそ怖い物語を読みたい人に向いています。読後には、題名の印象が最初とはまったく違って聞こえるはずです。
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