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たまゆら 表紙

たまゆら

2026年5月27日 更新

今日は、あさのあつこさんの『たまゆら』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
恋の美しさだけでなく、執着や罪の気配まで含んだ物語を読みたい時
刺さるポイント
山へ消えた少年を追う少女と、過去を抱えた老女の愛が異界のような自然の中で重なっていく
向いている人
濃密な恋愛小説、心理描写、静かに怖さがにじむ文学作品が好きな人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、あさのあつこさんの『たまゆら』をご紹介します。

『たまゆら』は、山の気配と人の業が絡み合う、濃密な恋愛小説です。物語は、人里と山の境に暮らす老女、日名子のもとへ、十八歳の真帆子が訪ねてくるところから動き出します。真帆子が愛する少年は、人を殺めたあと山へ消えてしまいました。彼を追いたい真帆子に付き添うように、日名子と夫の伊久男もまた山へ分け入っていきます。

この作品で描かれる恋は、甘く穏やかなものだけではありません。愛するという感情は、人を支えもしますが、時に相手や自分を追い詰める力にもなります。真帆子の切実な思いと、日名子が長く胸の奥にしまってきた過去が、山という閉ざされた場所で重なっていきます。読者は、若い恋と老いた恋のどちらにも、まぶしさと危うさがあることを感じるはずです。

山の描写は、この物語のもう一つの主役です。自然は美しいだけではなく、人の理屈を拒むような怖さをまとっています。登場人物たちが奥へ進むほど、現実と記憶、欲望と罪の境目が曖昧になっていきます。その静かな不穏さが、恋愛小説でありながら幻想的で、どこか恐ろしい読後感を生みます。

『たまゆら』は、恋をきれいな感情としてだけ描く作品ではありません。誰かを強く求めることの痛み、過去から逃れられない人間の弱さ、それでも手放せない思いを見つめています。明るい物語ではありませんが、深く沈んだ場所で人の心を覗き込むような読み応えがあります。静かで濃い余韻の残る恋愛文学を読みたい人におすすめです。

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