店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 血のつながりだけでは測れない家族の愛情を、明るい読後感で受け取りたい時
- 刺さるポイント
- 名字も親も変わってきた少女が、受け取ってきた愛情を力にして自分の人生へ進んでいく
- 向いている人
- 複雑な家庭環境を重く描くだけでなく、人の優しさを信じられる物語が好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』をご紹介します。
主人公の森宮優子は、十七歳の高校生です。幼い頃から家庭の形が何度も変わり、継父や継母のあいだを渡るようにして育ってきました。名字も変わり、親と呼ぶ相手も一人ではありません。それだけを聞くと、苦労や寂しさを背負った物語を想像するかもしれませんが、優子は自分を不幸だとは思っていません。むしろ、出会った大人たちから確かな愛情を受け取り、その愛情を疑わずに生きています。
物語の魅力は、複雑な家族関係を特別な悲劇として描かないところにあります。自由奔放な大人、少し不器用な父親、思いがけない形で親になった人たち。それぞれの選択には身勝手さやぎこちなさもありますが、優子を大切にしたいという気持ちは一貫しています。血縁や戸籍の形よりも、日々の食事を用意すること、進路を案じること、相手の未来を自分のことのように考えること。そうした小さな行動の積み重ねが、家族という関係を静かに立ち上げていきます。
読者の感想では、森宮さんと優子のやり取りの温かさや、親たちがそれぞれのやり方で愛情を手渡していく構成に心を動かされたという声が目立ちます。一方で、現実の家族問題を真正面からえぐる作品というより、善意が届く世界を信じたい時に読む物語として受け取られている印象があります。重い設定を扱いながらも、読後に残るのは痛みよりも、人に大切にされることの力です。
タイトルの「バトン」は、優子が親から親へ渡されてきた人生だけを指しているわけではありません。誰かが注いでくれた愛情を受け取り、それを次の誰かへ渡していくこと。自分を育ててくれた人たちの思いを抱えながら、自分の足で未来へ進むこと。その意味が少しずつ見えてくるにつれて、家族とは何か、親子とは何かをやわらかく問い直す作品になっています。
『そして、バトンは渡された』は、泣かせるために不幸を積み上げる小説ではありません。むしろ、人生の形が一般的なものから外れていても、人は愛されて育つことができると示してくれる一冊です。優しさをきれいごとで終わらせず、生活のなかの行動として描くからこそ、読み終えたあとに身近な人へのまなざしが少し変わります。
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