店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 物語を読むことそのものの怖さと喜びを、真正面から浴びたい時
- 刺さるポイント
- 少年たちの読書体験が、やがて小説という営みの深部へ踏み込んでいく
- 向いている人
- メタフィクション、読書論、意外な飛躍を持つ文学寄りのエンタメが好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、野崎まどさんの『小説』をご紹介します。
主人公の内海集司は、幼いころに物語と出会い、読むことに強く惹かれていきます。十二歳になると、同じように小説の魅力を分かち合える友人、外崎真と出会います。二人は、小説家が住んでいるという不思議な屋敷に入り込み、そこで本を読むことを許され、物語の世界をさらに深く知っていきます。けれども、その屋敷には、ただ読書好きの少年たちを歓迎するだけではない秘密が隠されています。
この作品は、タイトルの通り、小説そのものをめぐる小説です。読書が人生を豊かにするという明るい賛歌でありながら、同時に、物語に取りつかれることの危うさも描きます。なぜ人は小説を読むのか。読むだけで何かが変わるのか。物語に救われることと、物語から逃れられなくなることはどこで分かれるのか。そんな問いが、少年たちの冒険の形を借りて、少しずつ迫ってきます。
野崎まどさんらしい魅力は、読み始めの親しみやすさと、途中から見えてくる飛躍の大きさにあります。読書少年の成長物語として入っていける一方で、物語はしだいに現実の輪郭を揺さぶり、小説とは何を可能にするものなのかを大胆に問い直していきます。読者は、登場人物たちが本に没頭する姿を追いながら、自分自身がなぜページをめくっているのかも意識せずにはいられません。
また、本好きにとっては、読むことへのうしろめたさや幸福感が細かく刺さる作品でもあります。何かを後回しにしてでも物語の続きを読みたい気持ち。誰かと同じ本について語り合えたときの高揚。そうした身近な感覚が、やがて大きなテーマへつながっていく構成が印象的です。
『小説』は、ただ本が好きな人を肯定するだけの作品ではありません。小説を読むことは楽しい。けれども、その楽しさはときに人生を変えてしまうほど強い。そんな読書の力を、まっすぐに、そして少し怖いほど鮮やかに描いた一冊です。
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