店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 家族を守りたい気持ちが疑念に変わる心理サスペンスを読みたい時
- 刺さるポイント
- 息子への疑いを抱いた父親の選択が、日常と倫理の境界を崩していく
- 向いている人
- 親子、罪、疑心暗鬼を扱う重いミステリーに向き合いたい人
Reading Notes
読みどころメモ
今日は、歌野晶午さんの『世界の終わり、あるいは始まり』をご紹介します。
物語の舞台は、東京近郊のごく普通の生活圏です。そこで小学生を狙った連続誘拐殺人事件が起こり、町全体に不安が広がっていきます。主人公の富樫修は、妻と息子と暮らす父親です。事件は最初、ニュースの向こう側にある恐ろしい出来事にすぎませんでした。
ところが修は、あるきっかけから自分の息子が事件に関わっているのではないかという疑いに取りつかれます。証拠と呼べるほど確かなものがあるわけではありません。それでも一度生まれた疑念は、父親の視線を変えてしまいます。何気ない言葉、部屋の様子、子どもの沈黙。すべてが不穏な意味を帯び始めるのです。
この作品の怖さは、犯人探しの緊張だけではありません。家族を信じたい気持ちと、見過ごしてはいけないかもしれない違和感が、主人公の中で激しくぶつかります。もし疑いが本当ならどうするのか。もし間違いなら、自分は何を壊してしまうのか。その迷いが、読む側にも重くのしかかります。
本作は、親が子どもを見るまなざしを徹底して揺さぶるサスペンスです。親は子どものすべてを知っているようでいて、本当にはどこまで分かっているのか。守ることと隠すこと、愛情と自己保身はどこで分かれるのか。物語はそうした問いを、逃げ場のない形で突きつけてきます。
読み終えたあとに残るのは、単純な解決の気持ちよさではなく、自分ならどこで何を選ぶだろうかという苦い余韻です。明るい謎解きよりも、人間の弱さや家族の暗部に踏み込む心理サスペンスを読みたい人に向いている一冊です。
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