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生殖記 表紙

生殖記

2026年5月27日 更新

今日は、朝井リョウさんの長編小説 『生殖記』をご紹介します。

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店頭POP

今の気分に合う一冊かも

気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。

こんな時に
生きることや次世代へつなぐことの前提を、少し遠い視点から眺めたい時
刺さるポイント
人間を人間の外側から見るような語りが、欲望と社会の仕組みを不穏に照らす
向いている人
『正欲』以後の朝井リョウが気になる人、価値観を揺さぶる現代小説を読みたい人

Reading Notes

読みどころメモ

音声レビューの要点

今日は、朝井リョウさんの長編小説 『生殖記』をご紹介します。

主人公は、家電メーカーの総務部で働く尚成です。彼は同僚と新宿の量販店へ向かい、体組成計を買うわけでもないのに、どこか淡々と時間を使いながら日々を過ごしています。けれどこの物語で本当に特徴的なのは、人間の内側にある本能や欲望を、まるで別の存在が観察しているような語り口です。読者は尚成の暮らしを追いながら、いつのまにか人間という生き物そのものを、少し離れた場所から見つめることになります。

本作が問いかけるのは、子どもを持つことや、家族を作ることだけではありません。社会が当たり前のように語る幸福、成長、継承、共同体への参加といった言葉が、個人の身体や心にどんな圧力として届くのか。その感覚が、ユーモアと不気味さを含んだ文体で立ち上がってきます。自分の人生を自分で選んでいるつもりでも、どこまでが本当に自分の意思なのか。物語はその境界を静かに揺らします。

朝井リョウ作品らしく、現代社会への視線は鋭い一方で、登場人物を単純に裁くことはありません。尚成の迷いや違和感には、恋愛や性、家族、職場でのふるまいなど、日常の中では言葉にしづらい問題が重なっています。だからこそ読み進めるほど、これは奇抜な設定の小説ではなく、私たちが普段見ないようにしている仕組みを見せる物語なのだと気づかされます。

『正欲』で多様性や正しさの言葉を問い直した著者が、さらに別の角度から人間の生を見つめた一冊です。読み終えたあと、自分の中にある欲望や常識を、少し疑いながら眺めたくなります。

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