店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 恋の終わりを受け入れられない心の揺れに浸りたい時
- 刺さるポイント
- 元恋人とその新しい恋人をめぐる、奇妙で静かな三角関係
- 向いている人
- 執着、喪失、説明できない魅力を描く恋愛小説が好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、江國香織さんの長編小説 『落下する夕方』をご紹介します。
物語は、梨果のもとへ、別れた恋人である健悟の新しい恋人、華子が突然やってくるところから始まります。 梨果にとって大切なのは、まだ健悟です。 けれど健悟は華子に惹かれていて、華子はなぜか梨果の部屋に入り込み、そこで暮らし始めます。 ふつうなら怒りや拒絶で終わりそうな出来事が、この作品では奇妙な同居と、静かな三角関係へ変わっていきます。
梨果は健悟を手放しきれず、健悟は華子を追いかけ、華子はつかみどころのない魅力で二人の感情を揺らします。 誰が正しいのか、誰がひどいのかを簡単に決められないところに、この物語の深さがあります。 恋が終わったあとにも残る生活の匂い、相手が別の誰かを見ていると知りながら離れられない苦しさ、そして憎むはずの相手に惹かれてしまう不可解さ。 そうした感情が、抑えた文体で淡々と描かれます。
江國香織さんの恋愛小説は、劇的な修羅場よりも、心が少しずつ沈んだり傾いたりする時間を丁寧に見せます。 『落下する夕方』でも、登場人物たちは激しくぶつかるというより、相手の存在によって自分の輪郭を失っていきます。 その静けさが、かえって恋の残酷さを際立たせています。
この作品は、失恋から立ち直る物語というより、まだ落ちている最中の心を見つめる物語です。 執着も、やさしさも、嫉妬も、あきらめも、ひとつの感情に整理されないまま夕方の光の中に漂っています。 恋の終わりがはっきり終わりにならない、その曖昧さを味わいたい人に向いています。
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