店頭POP
今の気分に合う一冊かも
気分、読みどころ、向いている読者を店頭POPのようにまとめました。
- こんな時に
- 奈良を歩く旅の気配と、失踪をめぐる静かな謎を味わいたい時
- 刺さるポイント
- 異母兄の行方を追う旅が、残された人たちの過去と現在を浮かび上がらせる
- 向いている人
- 旅情のあるミステリー、女性同士の距離感、夢と現実のあわいが好きな人
Reading Notes
読みどころメモ
音声レビューの要点
今日は、恩田陸さんの『まひるの月を追いかけて』をご紹介します。
主人公は、異母兄の失踪を知らされた女性です。彼女は、兄の恋人から誘われ、奈良へと向かいます。橿原神宮、明日香、山辺の道。古い土地の記憶が息づく場所を歩きながら、ふたりは失踪した男の手がかりを追っていきます。けれど旅が進むほど、探しているのは兄の行方だけではなく、自分たち自身の過去や、言葉にしきれなかった感情なのだと見えてきます。
本作は、事件を追うミステリーでありながら、ロードノベルのような読み味を持っています。奈良の風景は、観光地として明るく描かれるだけではありません。昼の光の中にも影があり、古い寺社や道の気配が、人物たちの心の奥に沈んでいたものを静かに引き出していきます。題名にある「まひるの月」のように、見えているのに見えにくいものを追う物語です。
読みどころは、同行する女性ふたりの距離感です。相手を信じたい気持ちと、どこか疑ってしまう気持ちが同時にあり、会話の中には親しさと警戒が混ざっています。兄という不在の人物をめぐって、ふたりは少しずつ互いの輪郭を知っていきます。その揺れが、派手な展開以上に物語を引っ張ります。
『まひるの月を追いかけて』は、奈良の旅情と、失踪をめぐる静かな謎が重なった一冊です。急展開よりも、歩きながら心の奥へ降りていくような読書を楽しみたい人におすすめです。
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